坂ノ途中

想像力を持つ人々と持続可能な
農業のしくみをつくりたい
坂ノ途中 小野邦彦

PROFILE

株式会社坂ノ途中代表取締役の小野邦彦さん。「100年先も続く、農業を。」のモットーを掲げ、環境への負荷が小さく、持続可能な農業を広げる事業を展開。パートナー農家と契約した有機野菜の販売や、東南アジアの国々でコーヒーを育て森林伐採を防ぐ取り組みを行う。

どのように農業に
アプローチしているのですか?

坂ノ途中

環境に配慮した農家を、
パートナーとして支援

農薬や化学肥料に頼った農業に問題意識を感じて、自ら農業を始める若い人って、実は多いんです。彼らは熱心に勉強するし手間も惜しまないから、採れる野菜の品質はかなり高い。でも生産量は少ないし不安定になりがちで、大量生産・大量消費の流通のしくみにはなじみません。そこで、受発注や配送の管理をIT技術で省力化し、品質が高ければ生産量が少量だったり不安定だったりしても安定的に野菜を届けられるしくみをつくりました。

定期宅配のお客さんには子育て中のご家庭が多くて、「子どもが野菜に興味を持つきっかけになった」「季節の変化や野菜の旬に気づき始めた」といった声をよくいただいています。僕らの扱っている野菜は形が変わっていたり珍しい品種があったりで、お子さんにとって単純に「面白い」のでしょうね。本来、生きものって多様で、好奇心を刺激するものなんだと思います。

流通の世界ではどうしても効率が重視されるので、規格から外れた面白い野菜は歓迎されません。でも僕らは、いろんな生産者がつくった個性的な野菜たちを個性的なまま届けています。

ズバリ、20年後の農業は
どうなると思いますか?

坂ノ途中

効率化優先のままでは、
持続できなくなるかも

農業って人類が生み出した最強の環境破壊手段なんです。人類の歴史は、農地をダメにしてきた歴史。農業に向いた新しい土地は世界にもうほとんどありません。

現代農業は、いろんな工夫が積み重ねられた知恵の結晶でもありますが、作物を効率よく育てるために「競争相手となる生きものを農薬で排除しよう」という発想になりがちという負の側面も持ちます。虫とか、草とか、菌とか。でも生態系はいろんな生きものが複雑なバランスを保って成り立っています。農薬によって特定の生きものだけを減らすとバランスが崩れて、作物の育ちが悪い土地になる。今度はそれを化学肥料で補うので、ますます競争力が落ちたひ弱な作物になる。

また現代農業は、化石燃料をガンガン消費します。化学肥料をつくるには大量の天然ガスが使われていますし、イチゴやトマト、きゅうりなどのハウス栽培は暖房の使用が前提になっています。

目の前の効率を優先するために、土や化石燃料などの限りあるものを使い果たしていっている、つまり「未来からの前借り」をしている状態です。それって、これからを生きる子どもたちに対してとんでもなく罪深いんじゃないの? という話です。

今さら僕らが動いて20年後が変わるのか、正直わかりません。でも足を踏み入れたからには共感してくれる人を増やそうと頑張っています。

20年後の未来、必要なのは
どんな力でしょう?

坂ノ途中

見えないものを想像する力と、
多様性を認める心

里山のトンボやハチが減ってきているのはなぜなのか。農薬を使うと、土の中の生きものはどうなるのか。化学肥料はどうやってつくられたのか。農業は、そういった直接見えないことを想像できる人じゃないとやってはいけないと思っています。

想像力が大切なのは、農産物を買う側も同じです。例えば、「す」(空洞)が入った大根は、不良品とされている。でもなんで「す」が入るのか、想像してほしいんです。

大根は、春になって虫が出てきたら花粉を運んでもらおうと、栄養を蓄えている。暖かくなるとその栄養を使って花を咲かせるから、そのときに中がスカスカになるのは当然です。それを「いつも同じじゃなきゃヤダ」って嫌うのは、工業製品と同じ感覚ですよね。それより「す」が入っていたら「ああ、もう春が来るんだ!」って思える社会の方が居心地がよくないですか。

野菜という生きものに同じ規格を求めることと、人間の多様性を受け入れない社会ってつながっている気がします。「甘くないけど香りがいいな」「割れてるけどみずみずしいや」なんて野菜一つひとつのキャラを楽しめたら、周りの人のブレも許せるようになるんじゃないでしょうか。

想像力を持ち、多様性を認める子どもが増えてくれたらいいですよね。

今の中学生に取り組んでほしいことは
ありますか?

坂ノ途中

「外」の世界に出ること、
答えがない問いがあると知ること

大事だと思うのは、学校と家以外の「外」の世界を知ること。僕は中2のころ、同級生とのつき合いに違和感を覚えて、図書館や将棋道場に通ったことがありました。アジアを旅した人の本を読んで海外に思いをはせたり、親せき以外のじいちゃんと初めてしゃべったり。同級生や家族以外にも、世の中にはさまざまな人が、社会が存在することを知りました。

もう一つ、答えがない問いがあることを早めに知ってほしいとも思います。世の中の問いには何でも答えがあると思っていると、すぐに答え合わせをしたがったり、複雑なことを考えなくなったりしてしまいがち。おうちの方も、お子さんから聞かれてわからないことがあったら、見えを張らずに「それは私もわからない」と言っていいと思うんですよね。

「わからない」という満ち足りない気持ちを常に抱いているくらいの方が、目の前に見えないことを想像しようとする人に育つんじゃないかなあ。

株式会社坂ノ途中Webサイト

坂ノ途中
Special Interview 『未来への鍵』

未来を予測しにくい時代だからこそ、これからの進路を幅広く考えることも大切です。20年後、今の中学生が大人になったときともに社会で活躍しているであろう挑戦者たちに、未来を生き抜くヒントを教えてもらいました。

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取材・文 / 児山雄介(オンソノ)
人物撮影 / 楠本夏彦
編集 / 横田真里子

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